印紙税の落とし穴~後篇~

前回に引き続き印紙税についてお話いたします

※前回の内容はこちらをご覧下さい。

 

【 7号文書 に関する留意点 】

7号文書とは継続的取引に関する契約書で、下記のような契約書が課税の対象となります。

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1号文書、または2号文書のうち、記載金額のないものは200円の印紙税が課せられますが、それで終わりにしているケースが良く見られます。実務上、1号文書、2号文書のうち記載金額のないものは、7号文書にも該当していることが良くあります。もし7号文書の要件にも該当すれば、印紙税の基本ルールとして、原則として印紙の金額が大きくなる方になりますから、たとえば2号文書と7号文書のいずれにも該当する文書は、7号文書として4,000円の収入印紙を貼付しなければなりません。1号文書または2号文書で記載金額がなければ200円の印紙を貼付して終わりという理解をされている方が非常に多い印象を受けますので、これらの文書が7号文書にも該当しないかどうかしっかり確認する必要があります。7号文書の要件は以下の通りですが、この5つの要件の全てに該当する契約書は7号文書となります。なお、①の「営業」の範囲は、下記の17号文書でいう「営業」の範囲と同じです。公益法人などの公益的な法人は営業者には該当しないので、例えば公益法人と継続的取引契約を締結しても、7号文書には該当しません。

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【 17号文書 に関する留意点 】

17号文書とは領収書などの受取書で、下記のような文書が課税の対象となります。

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17号文書とは受取書などの文書を指しますが、売上代金に関する領収書は17号の1に区分され、記載金額に応じて課税されます。売上以外の代金を受領する領収書は17号の2として区分され、一律200円が課税されます。なお、売上代金とは「対価性のあるもの」を指しますので、日常業務における領収書は、概ね17号の1に区分されることになると思います。

なお、実務上、問題になることが多いのは、「営業に関しないもの」の範囲です。「営業に関しないもの」に該当する領収書であれば、非課税文書となり印紙税が課されませんが、ここでいう「営業に関しないもの」の「営業」の概念は法人と個人とで違います。個人における「営業」とは「旧商法の営業概念」とほぼ同義であると考えられていまして、例えば、①士業 ②農業や漁業などの一次産業 ③医師や整体師など は営業から除かれる職種です。したがって、これらの個人事業主は、所得税においては事業所得ですが、交付する領収書は印紙税が課税されません。しかし、サラリーマンなどが、不動産賃貸などの賃料収入がある場合には、たとえ副業であっても、不動産賃貸業に関する領収書は印紙税の課税対象になります(事業規模は問いません)。

一方、法人における「営業」とは、一種の「公益概念」がないかどうかで判断され、例えば医療法人は、法令により剰余金の配当が禁止されているという理由で営業には該当せず、原則として、医療法人には印紙税はかかりません。印紙税における「営業」の範囲は少し独特な考え方をしていると言えます。

 

3.節税や税務調査について

最後に印紙税の節税について数点ご紹介します。一般的には下記の手法が挙げられます。

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最後に、税務調査について少しだけ述べさせていただきます。印紙税の調査は、通常、法人税などの他の税目の調査に付随して行われることが多いのですが、実は印紙税の単独調査もあり得ます。なお、印紙税は、他の税金と違って「推計課税」という手法により課税することが許されている税金です。推計課税とは、その名の通り、税務職員が推測で課税する手法のことで「取引量が○○件だから、3年間で大体このくらいだろう」という一定の根拠に基づいた「推測」によって課税されてしまいます。なぜ推計課税が許されているかというと、印紙税は領収書などをチェックする必要がありますが、肝心の領収書は既に交付済で手元になく、推定で課税するしかないと考えられているからです。したがって、もし印紙税の課税対象となるような「見積書」を1枚でも見つけられた場合には、取引量を根拠に推計課税され、数百万円単位の課税が一気に発生するかも知れないという、大きなリスクがある税金なのです。また、印紙税の調査には、税理士の立ち合いが認められていません。ですから、税理士にとって印紙税はマニアック(?)な税金になっており、印紙税に強い税理士は非常に少ないのが現状です。よって、納税者は税務署の言いなりになることが多い税金とも言われています。

このように、印紙税にも大きなリスクが潜んでいますので、定期的に業務フローを見直していただき、特に大量にお客様に交付する文書には十分な注意を払っていただきたいと思います。

 

(担当:税理士  社会保険労務士 都筑 正之)

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