【コラム】 決算書とは? ~後篇~
前回に引き続き、「決算書とは?」というテーマでお話しさせていただきます。
今回は「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」について説明いたします。
【損益計算書の役割】
損益計算書は、一言でいえば「一定期間の利益を示すもの」です。通常は、1年間をひとつの時間的な区切りとして、その間の経営活動の成果を集計し、損益計算書にまとめます。前回の貸借対照表よりも、この損益計算書の方が気になるという経営者の方もいらっしゃるかもしれません。どのくらいの売上が発生したか、また、経費を差し引いてどのくらいの利益が残るか、利益に対する税金はいくらかかるのかなどの情報が、判りやすく数字に表れてくるからです。
ただし、損益計算書のみを重視してしまうと、単年度利益を上げる為に、不良在庫の処分を先延ばしにしたり、逆に、納税額を抑えるために、必要のない設備投資をするなど、場当たり的な経営に走ってしまう危険性もあります。
また、もう一つ重要なことは、損益計算書上の「利益」が、必ずしも「現金」として残らないという点です。これは、会計が、現金の動きではなく、取引の発生を基準に損益を計上している都合上生じるズレですが、損益計算書上で利益が出ていても、資金がショートすれば経営が出来なくなることは言うまでもありません。
とはいえ、会社の目的が「稼ぐこと」である以上、損益計算書が大変重要であることは間違いありません。
短期的な利益を追いかけつつも、今期がどういった位置づけで、どのような着地をすべきなのかといった、中長期的な視点も意識して、理想の損益計算書を作り上げてゆくことが、非常に大切だと言えるでしょう。
【キャッシュフロー計算書の役割】
キャッシュフロー計算書は、第3の財務諸表として、2000年から日本に登場しました。「会社の一定期間のキャッシュの流れを示すもの」です。前述の通り、損益計算書上でどんなに利益が出ていても、手元に現金がなければ、経営は出来ません。キャッシュフロー計算書は、ある意味、もっともダイレクトに経営に関わる財務諸表といえるでしょう。
現金が増えるとキャッシュフローはプラスとなり、減るとマイナスになります。
また、どのようにして現金が増減するかによって、キャッシュフロー計算書は、以下の3つに分類されます。
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通常の営業活動のキャッシュの流れを示す「営業キャッシュフロー」
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設備投資など、投資活動のキャッシュの流れを示す「投資キャッシュフロー」
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借入金など、財務活動のキャッシュの流れを示す「財務キャッシュフロー」
基本的には、本業で資金を稼ぎ、その資金を投資に回して、その残りを借入金の返済に充てることになります。それをキャッシュフローで表現すると、①営業キャッシュフローがプラス(本業で資金を増やす)、②投資キャッシュフローがマイナス(増えた資金を投資に使う)、③財務キャッシュフローがマイナス(借入金の返済に資金を使う)といった状態です。
つまり、①の営業キャッシュフローがプラスになることが、企業経営の大前提となります。これがマイナスになるということは、すなわち、本業で現金が稼げていないということですから、この状態が長く続けば、いつかは資金ショートしてしまいます。
例えば、損益計算書上は利益が出ているのに営業キャッシュフローがマイナスであるとすれば、売掛金の回収期間に比べて、買掛金の支払期間が短いという可能性もありますし、在庫として残る期間が長い、つまり商品の回転率が悪いのかもしれません。そしてそれは、貸借対照表で、売掛金と買掛金のバランスや棚卸資産の額に表れてきます。
このように、貸借対照表、損益計算書と合わせて、現金の流れをキャッシュフロー計算書で追うことで、より現実的な会社の姿を浮き彫りにすることが出来るでしょう。
今回のコラム、いかがでしたでしょうか?次回のコラムは6月15日に更新予定です。どうぞお楽しみに!!
(担当:監査部1課 課長 鷲尾 歩)